その後は晩ご飯だお風呂だなんだでレモと話す暇もなく、時間は過ぎて行った。
結局二人だけで向き合うことが出来たのは、就寝前になってからだった。
「ねぇレモ。やっぱりおばあちゃんも、ボクみたいに中の人がいたのかな」
布団に横になって話してるのはお泊まりみたいでなんだか楽しいけれど、話す内容はちっともふざけてないし僕の頭じゃ大変だ。
「僕らのような人格が生じやすい血筋もあるようだから、…多分」
「でもおばあちゃんの中の人はレモ達ではなかったんでしょ?」
「うん。僕らはあくまで克也の精神の分離体…つまり人格だからね」
だよねえ。そうでもない限り、ボクの中の人であるレモ達がおばあちゃんの中の人でもあるだなんていう複雑なことになっちゃうし。それにレモや志賀君は、ボクの理想とか無駄に反映してくれちゃってる存在でもあるし。
いくらなんでも、おばあちゃんの人格でもあったけど実は記憶がないとか、その反映の仕方もぐにょぐにょ変わるとかないだろうし。
つまりは、その全く違う中の人が、おばあちゃんをどうにかしてしまったということで。
「レモはボクを守ってくれるって言うけど、それって志賀君が諦めるまでずっとってことなんでしょ?」
「…そうだよ」
…そんないつまで続くかも分からないこと、させられないよ。
あんまりその点について深く考えたことはなかったけれど、下手したら半永久的に続いちゃうかもしれないじゃないか。
すぐ諦めるか諦めないか、志賀君がどうするか。全然予想がつかなかった。
だって彼がどうしてそんなことをするかも分からないのに、予想なんて出来っこない。
とにかく帰ったら説得するしかない。ボクはその問題を頭の片隅に押し込んだ。
寝転がっているレモを見て、本当に人間みたいだと思いながら、口を開く。
「…あの、志賀君と仲直りしてないの?」
聞いていいのかどうかは分からなかったけれど、ボクは心配だった。
なんだか倒れて保健室に運ばれた日から妙にレモは上の空だし、…まあ今日はわりとしっかりしてたけど。
派閥の違いもあって、一概に喧嘩と言っても解決は難しいのかもしれない。
「…別に喧嘩ってほどの喧嘩もしてないよ」
レモは僅かに掠れた声で、ボクの質問を受けた。
あれ、てっきりこの間の帰り道妙に険悪な空気が流れてそれっきりだったから、その間喧嘩してるのかと思ってた。ネオさんを交えて、恋愛と友情が揺れるような感じの。派閥事情も混じって余計難解そうなさ。
「あいつがネオと仲良くしようが僕には関係のない話だよ」
えぇー。本当かな。志賀君との間に友情が全くないわけじゃないんだからさ、その友情が揺さぶられるピンチなのに。
「ほら、もう遅いから寝た方が良い」
レモはぽんぽんとボクの頭を撫でて布団へと寝かしつけた。
全くもう、レモって毎回誤摩化してばっかりなんだから。
昔からそんなに秘密主義だったかなー。もう。ああもう駄目だなぁやっぱ牛並みにもうもう言っちゃうよ。
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