眠りについたボクは、いつものようにレモの隣に腰掛けた。
「克也、夾子とのデートはどうだった?」
レモはボクが夾子と映画に行く際、見送ってくれたんだ。
まあ結果くらいは報告しておかなきゃかな。
「楽しかったよ。…手は繋げなかったけど」
「そう」
夾子が深層派だということをレモは知っているのだろうか。
志賀君のことを前もって知っていたくらいだから、知っているのかもしれない。
でもそれならどうして、ボクと夾子の仲を応援してくれるんだろう。
あまり都合が良さそうには思えないけれど。
そんなボクにレモは、
「…何か夾子に言われた?」と、一言。う…鋭い。
「ど、どうして?」
「何か考えてます、って顔に書いてあるからさ」
長い付き合いだからかな、レモには隠し事は出来ないや。
ボクはわざとらしくため息をついた。
「ずるいよレモ。ちょっとはボクにも悩み事くらい抱えさせてよ」
「ああ、ごめん」全然そんなこと思ってないって、レモこそ顔に書いてあるんだけども。
「でもレモ。何でもないんだ」
ボクは誤摩化した。
レモは「そう」とそれ以上追及してくることはなかった。
ボクはレモが曖昧な受け答えをするともどかしく感じたりするけど、
レモはボクがそういう答え方をしてもあまり気にならないみたい。
でも…なんで誤摩化したんだろう。多分…、最後に夾子に言われたことが気になったからだ。
___あいつを信用しないで。
ボクは頷けなかった。志賀君のことは、うん、とりあえず普通に接してみるけど。
…夾子のことは入学した時から、好きだよ。
だけれどレモとは子供の頃からの付き合いで、信頼もしている。
それをいきなり信用するな、と言われたところで、出来るはずもない。
「…ねぇレモ。ちょっと肩借りてもいい?」
「勿論。眠いなら寝てもいいよ」
「…じゃあ、ちょっとだけ」
夢の中で眠るのがおかしいだなんて今更思わなくなった。
瞼を閉じる前に見たのは、彼の微笑み。
……ねぇ、ボクはレモを信じてるからね。
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